鉄道好きなら、鉄道会社だけには入んな(但し、工学系を除く)

私は、鉄道が好きだ。特に子どものころは。青春18きっぷでどっか遠くに行く、古ぼけた車窓から自然や人の営みを眺めるだけでよかった。いまは、普通列車の硬いシートでの長時間の移動は耐えられなくなってきた。夢がなくなってきた。夢、そう小学校の時の卒業文集に書いた夢は駅長だった。

あれから、10年ぐらい経っただろうか。今、鉄道会社に勤めたいかと言われれば答えは否、だろう。自分に合ってない、価値観が違う。そんな理由だ。

昔、『鉄道員(ぽっぽや)』という映画があった。キハ(ディーゼル気動車)の寡黙な運転手を高倉健が勤めていた。おんぼろのキハが走るローカル線があり、鉄道一筋の人間、そんな人間がいきる場があった。

新幹線が青森まで開通したらしい。東京の中央線のモニターのCMには、こんど新青森駅に赴任する駅員達を俳優達が演じている。主役は三浦春馬。私は、名前しか知らないが、さわやかさだけはわかった。笑顔が素敵だ。

寡黙の鉄道マンから笑顔の接客マンへ、もはや赤字ローカル線などない等しい、ニュースは新幹線、新幹線、新幹線だ。かつて鉄道命で働いていた鉄道マン達は、今、お客様命で働いている。

鉄道マンはお客様を動かしているのであって鉄道を動かしているのではない。鉄道はお客様の脇役であって主役であってはならない。無味乾燥としたステンレスの車体はそのことを物語っている。ただの動く箱だ。

鉄道が好きな人間にとってそれは単に動く箱ではない。歴史と物語をつめこんだ思い出の箱だ。けれど、多くの人間にとってその中身は空気に等しい日常だ。硬い固定式クロスシートの想い出は、多くの乗客にとってどうでもいい当たり前の日常か、むしろ改善されて欲しい問題だ。

人の安全な移動に奉仕するという点では変わらないだろう。しかし、いかに鉄道がでしゃばらないか不快感を与えないか、そんなことも現在の鉄道会社の使命だ。飲み屋のにいちゃんごとく、いかにお客様の裏方として奉仕するか、それが鉄道マンの仕事。

だから、文系大卒鉄道マニアは鉄道会社に入るな。入っても幻滅するだけだ。君たちは、鉄道を触れるとも限らない。旅行やバスならいい、賃貸業やコインパーキングの営業をしてまわるかもしれない。君たちは鉄道会社にそれをイメージしているか。もはや、鉄道の稼ぎなどないということを多角経営の産物であるということを、知識ではなく体感として持っているのか。

もし、手先が器用なら現業職もよかろう。ただ、笑顔だぞ、笑顔。技術系ならがんばれ!!君達にはまだ未来があるかもしれない。

どちらにせよ、鉄道会社が求めているのは、鉄道オタクではなく飲み屋のにいちゃんだということを忘れるな。